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緒論

   近年,若者の理系離れが社会問題となっている。これは,中学や高等学校に おいて実験等による実際の体験を伴った学習よりも,受験を中心に考えるため, 実験の機会が減少し,教科書だけを使用した学習によって,理系科目への興味が 無くなってきたためであると考えられる。従って,理系の科目に興味を持っても らうためには,実験の機会を増やさなければならないと考える。しかし,実験に 十分な時間を確保できたとしても,学習者1人に1台の実験装置を準備するのは, 予算や場所の制限から無理な場合が多い。

一方,インターネットにおいて,フレッツADSLに代表されるような本格的ブロー ドバンド時代に突入したと考えられ,高速な通信環境が個人レベルでも簡単に 手に入るようになってきた。また,PCも高速化,低価格化が進み,初等教育に おける情報教育も,さほど珍しいことではない。 そこで,佐賀大学理工学部電気電子工学科計算機応用工学研究室では,初等教育に おける実験の環境が整っていない問題を解決するために,ウェブベースの「仮想 実験室」[16] [2]の構築を行ってきた。 「仮想実験室」を用いることにより,時間的問題を解決でき, コンピュータを使用できる環境であれば,いつでもどこでも実験が可能になる。 しかし,当初開発した「JAVA仮想振り子」はCG(Computer Graphics)を用いて学習す るだけであったため,学習者が,実際の実験とCGの結果では異なるのではないか という懸念があった。そこで,本稿で紹介する「単振り子学習支援システム」 [16]には,ブロードバンドを利用することを想定し,学習者が遠隔地か ら実験装置を操作し,実際の実験の模様をストリーミング技術を用いて,中継す る機能も追加した。 また,物理学実験にはリアルタイム計測・制御が必要な場合が多いため, 実験装置の制御用OSに,リアルタイム・タ スクを実行するためのLinuxの拡張機能である,RT-Linux[3] [4][16][6][7]を使用した。

しかし,「単振り子学習支援システム」は計測した角度データを動画と同期を とって表示する機能は未だ実装されていない。 本システムによる学習効果を高めるためにも,動画像と角度データを同時に表示 できる機能は必要であると考えられる。

そこで,本研究では配信する動画と同期可能な「計測データ表示システム」 の開発を試みた。

本システムは,利用対象とする小・中・高校生に,PCの操作に不慣れな利用者も 多く,専用のアプリケーションのインストール等が必要なシステムは不向きであ ると考え,既存のアプリケーションで利用可能なものとして本システムを構築し た。そのため,本システムでは学習者が利用する場合に,ブラウザと RealPlayer[8][9]だけで操作できるようにした。ブラウザは一般の家庭にあるPCにも標 準でインストールされており,RealPlayerも動画再生用のアプリケーションとし て広く普及していることから,学習者にとってブラウザとRealPlayerの導入・操 作は容易である。さらに,計測データの画像フォーマットにはSVG(Scalable Vector Graphics)[10]を使用した。SVGとはRealPlayerで再生可能な画像 フォーマットであり,XML(Extensible Markup Language)に準拠したものであり, JPEG,GIF等の画像に比べ,単純な画像であれば,ファイルサイズが小さくなる。 また,テキストで際利用しやすい等の利点がある。




本論文の構成について説明する。



平成15年3月14日